Special contents

-Prologue-

デンソーグループの一員として、カーエアコンシステムを構成するホース・アルミ配管の技術開発・製造、そして販売を一貫して行う。それが、私たちの核となる事業です。デンソーのエアコン部門の一翼を担う私たちがモノづくりを行ううえで大切にしているのは、常に世界シェアNo.1が狙える技術を開発し、品質・コストそして車両への搭載性などさまざまなお客さまのニーズに、すばやく応えることのできる製品を世に送り出すこと。
そして、なによりも忘れてはならないのは、人や自然にやさしいモノづくりを追求することです。デンソーと深い信頼関係にあり、ともに高いレベルの製品開発をめざす私たちなら、きっと実現できると考えています。地球に心地よい風を送り続ける。私たちの挑戦は、まだまだ続きます。
Technology

デンソーエアシステムズは、製品の設計から製造・品質保証までの一貫した体制が整っています。そのため、さまざまな分野の技術力を有しているだけでなく、高品質の製品を安定して生みだすことが可能です。デンソーと共同開発する機会も多くあります。
Product

お客さまのニーズに応えたい。次の時代を見据えたモノづくりをしていきたい。
そんな技術者たちの思いを宿した製品をいくつかご紹介します。
SCX
―2重管式内部熱交換器―
2重管式内部熱交換器で、カーエアコン用の動力をアップすることなく冷房性能を向上させることができます。

SCX(Sub-Cool Accelerator(X))とは、2重管式内部熱交換器のことをいいます。カーエアコンの配管部品のひとつで、車の冷房性能を左右する重要な部品であり、デンソーエアシステムズが世界に誇る製品のひとつです。アメリカ合衆国環境保護庁によるCO2排出削減効果の認定を受けており、税制上のメリットもあるため、多くのカーメーカで採用されています。
従来の配管と大きく違う点は、液冷媒とガス冷媒それぞれが流れる管を1本にまとめたことです。つまり2重の管になるということ。これにより内管に流れる低温のガス冷媒と、内管と外管との隙間に流れる高温の液冷媒との熱交換が可能になりました。さらに内管に独自のらせん溝をつけ熱伝達を促進させることにより、より効率よく伝えられるようになり、配管の長さが40cm程度となり、また自由に曲げることもできるので、小型車をはじめさまざまな車のレイアウトに対応できます。その結果、今までのエアコンより冷房性能を5~12%もアップさせることができました。ストレートの配管に、らせん溝を後加工するほか従来の配管を使って2重管を構成するので、コストも低く抑えることにも成功しています。普段あまり目にすることはありません。誰もが知っているメジャーな部品でもありません。けれども車をより快適なものにしていくためには決して無視できない。それが配管だと考えるのです。配管の進化は、SCXで終わりではありません。今日もSCXを越える配管を、デンソーエアシステムズは考え続けています。


世界を視野に入れ、他社製品の性能を上回る製品を造ることはできるか。現状と同じ機器を用い、かつ動力もアップしないで冷房性能を向上することはできるか。この未知なる挑戦に挑んだのが、デンソーエアシステムズ(当時のデンソ-エア-ズとGAC)とデンソ-の開発部門の技術者です。(※)
チームを組み、来る日も来る日も試行錯誤を繰り返すうちに、このミッションをクリアするためには2重管が理想的であるという考えまで行きつきました。しかし、その先からが問題でした。2重管を曲げると、どうしても管と管の隙間が塞がったり、歪みが生じてしまうのです。この悩みに一筋の光をもたらしたのが、一人の配管ベテラン技術者。
ある日、その技術者は解決策を考え続ける中でふと以前から興味を持っていた竜巻の形状を思いついたのです。直感的に「いける!」と思った技術者は、施盤でらせん溝をつけた試作品を造りチームの元へ。性能評価を調べる実験を行ってみると結果はクリア。管の中を流れる冷媒の熱交換の効率も良く、隙間が塞がることもありませんでした。そこから開発は急ピッチで進行。試作と評価を繰り返し週に一回のサイクルで開発を回し、ついに完成した時はチームみんなでモノを造りだす喜びを知りました。
この製品を通して、車の快適性と省燃費はまだまだ広がっていくでしょう。
※2009年にデンソーエアーズ(株)とGAC(株)(現在の(株)デンソーエアクール)のホース事業、デンソーのホース・配管の開発部門が統合し、現在の(株)デンソーエアシステムズとなっています。
EV・PHV車両の
ヒートポンプ
システム
熱源がほとんどないEV・PHV車両でも、冷房や暖房などができるシステムです。

ヒートポンプシステムは、デンソーとともに開発を始めました。ヒートポンプシステムとは、車外つまり外気の熱を取り込み、車室内の暖房をする仕組みのことです。言葉で言うのは簡単ですが完成に至るまでには、車両への効率の良い搭載性や暖房性能の向上、低コスト化、製造の自動化などさまざまな課題がありました。その中でも特に頭を悩ませたのが車両への搭載性です。カーエアコンでヒートポンプシステムを採用する場合、家庭用のエアコンとは異なり除湿暖房の性能を加えることが必要です。そのため今までのエアコンシステムより必要な機能が増えることになるのです。そこで技術者たちはまずヒートポンプ用のモジュール開発に着手。車両メーカへ幾度となく足を運び、車両スペースのどこに配置するかを他部品との兼ね合いも考えながらデンソーの搭載設計グループと議論し、現在の形状になるまでに十数回の形状改良を施しました。2017年2月、当社のモジュールを備えたヒートポンプシステムが搭載された車、プリウスPHVが発売されました。
今後、社会の中でEV車(電気自動車)やPHV車(プラグインハイブリッド車)はますます増えていきます。その理由のひとつに、環境への高い関心が挙げられるでしょう。ヒートポンプシステムは、現状のEV車やPHV車の多くに採用されている電気ヒータよりも1/3程度の電力で同等の暖房性能を発揮する環境にやさしいエアコンシステムなのです。だからこそヒートポンプシステムも、EV車やPHV車と同様にもっと社会に受け入れてもらえるよう、新しい性能を備えていかなければならないと考えています。ヒートポンプシステムの未来はこれからです。